ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
それに、翔太はお祖母さんを亡くしている。

それは寿命だったけれど、かなり辛い思いをしたことは良く知っている。

あの時の悲痛な顔、数年経った今でもはっきり思い出せる。

私がもし死んでしまったら、どんなに辛い思いをさせるか。

きっと、あの時みたいに悲しむんだろうな。

そして翔太のことだ、自分がそばにいなかったことを後悔するんだろう。

だからね、死ねないよ。

翔太を残して死ぬなんて、そんなことできない。

もう2度と、あんな辛い顔…させたくない。いや、させない。

そう決めたんだ。


あたしは強く目を閉じた。


あたしのこの力は誰かを守る為にある。

だから、あたしに力を貸して。

人間たちを守るために。

この街を守るために。

そして、翔太の笑顔を守るために。


ふっと目を開いた。

もうそこに迷いなどなかった。


あたしはあたしがやれることを、するだけだ。


「"モーメント・ムーブ"」

小さい声で呟き、臨海地域へと飛んだ。





目を開けると、そこは確かに臨海地域だった。

けれど、あたしは自分の視力を疑わざるを得なかった。


「…なにこれ、聞いてないんですけど!」


ヒュドラが5体もいるなんて、あまりの非常事態に呆然としてしまう。

ヒュドラがあちこちで暴れまわっている。

猛毒の液体が砂浜のあちこちに水溜りを作っているのはおろか、海水に混じって紫色の液体が浮いているのも確認できる。
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