ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
呪文のお陰で全ての火と水は相討ちになり水蒸気となった。

辺りには白い霧が漂う。


「"サンダー・アロー"!」

続けてあたしの反撃。雷の矢を二本、ヒュドラめがけて矢を放つ。

しかし視界は未だ白いまま。ヒュドラの正確な位置など分からないけれど、それでもその気配だけを頼りに放った。

矢が白い霧の中に吸い込まれると、次の瞬間ヒュドラの痛みに呻く鳴き声が辺りに響いた。どうやら命中したらしい。

けれど、あたしの攻撃はこれで終わらない。

「"サンダー"!」

極め付けに雷を落とす。

それはヒュドラに、ではなく、あたしが放った矢に。

未だ矢はヒュドラに突き刺さったままだろうから、さらに電圧が上がり効果が増すはず。

案の定ヒュドラの苦しそうな叫びが聞こえた。

けれどそれは数秒間続くとパタリと止んでしまった。


「残り、2体…」

けれど、安心はできない。

何てったって、あのヒュドラなんだから。

「"ウィンド"」

風を呼び起こす。

白い霧の中では相手の正確な位置すら把握できない。

さぁ、あの2体はどこに…

「な…!」

あたしは目を疑った。


そこには4体のヒュドラがいた。

そのうち2体は少しだけ火傷を負っているようだが、命に別状はないと思われるレベルだ。

そして、ヒュドラの冷たくも狂っている黄金の瞳はギラギラと輝いている。


「どうして…」

どうして、効いてないの。

あたしの攻撃を受けて、どうして無事でいられるの。

確かに電撃を与えたはずなのに。

確かに攻撃は命中したはずなのに。


冷や汗が背中を伝った。


あの攻撃が効かなかったなんて。

あたしはどうやら彼らを甘く見ていたようだ。

どうやらこの依頼は簡単には遂行できないらしい。
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