ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
二回ほど大きく深呼吸をして、目を開けた。


大丈夫。

落ち着いていれば、あたしは負けない。

負けないし、死なない。

否、死ねない。

翔太を残して死んだりできない。

あたしが死ねば、翔太はきっと悲しむ。

悲しんで、きっとあの顔をする。

翔太にはもう2度と、あんな悲痛な顔はさせない。


そのためにあたしは、


「生きる」


生きて、帰る。

翔太の、元に。


決意して拳を握ると、ヒュドラたちが一斉に攻撃してきた。

それぞれの口から毒を吐きかけてくる。

おまけに、相変わらず弾丸のような水の球が飛んでくる。

命中すれば身体に風穴が空きそうだ。

そんな球の動きを目で追いながら、難なくひらりと攻撃を交わしていく。この程度の攻撃なんかでは、あたしはやられたりしない。

けれど、やっぱりなめてかかってはいけない相手なので。


「"ストレート・フラッシュ"！」

こんな魔法、一時凌ぎだとは分かっている。

けれど中々大きなダメージを与えるような攻撃ができない。

何せ、ヒュドラ4体、首の総数は36だから。

注意が必要なのはヒュドラの攻撃は勿論のこと、足元だってそう。

何故なら、そこら中ヒュドラの毒を含んだ水溜りだらけだからだ。

砂浜の砂ですら浸食する毒を避けつつ攻撃できるタイミングを図る。

けれど一向に機会は訪れない。36の首が常にあたしを捉えており、反撃の暇を与えない。

「"サンダー"！」

小さな電撃を向かってくる首に与えて一時凌ぎをするしかできない。

それにこうやってチマチマ攻撃をしていても効果は殆どないし、あたしの魔力が削がれるだけ。

一体どうすればいいの。
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