ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
なぁ、と翔太が声をかけてきて、妖艶な笑みを浮かべて言った。

「まだ、戦えんだろ?」

あの時吹っ飛んでいったあたしの杖を差し出してくれている。

「当たり前」

あたしも不敵な笑みを浮かべてそれを受け取った。

動くようになった足。

目の前には大好きな人の笑顔。

…なんだか、今のあたし、無敵かも。


ギャアア、と叫び声をあげてこちらに向かってくる1体のヒュドラ。

あれ、もう1体は…

「もう1体が後ろから来るぞ」

背中に伝わる体温とともに、翔太の声が後ろで聞こえた。

「え、一緒に戦ってくれるの?」

首だけ後ろを向いてそう問いかけると、翔太も首だけをこちらに向けて不敵な笑みを浮かべていた。

「…油断、すんなよ」

ちょっとだけ照れたようにも見える翔太の顔。

それが凄く愛しいと思った。

「…ありがとう」

そう伝えると、翔太はニヤリと笑った。

「…足引っ張んなよ、アホ由良」

「それはこっちのセリフだよ、バカ翔太」

あたしも笑ってみせた。


ギャアア、と叫び声をあげてこちらに向かってくるヒュドラ。

恐ろしいことには変わりはないけれど、心にさっきまでなかった余裕があった。

悪いけど、今のあたしはさっきみたいにそう簡単にはやられないんだよね。

だって今のあたしは、

「…無敵、だから」

一緒に戦ってくれる、大好きな人がそばにいるから。

これほど、心強いものってない。
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