ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
ふと見れば「"アイス・グラウンド"!」と唱える翔太がいた。


どうしてだろう。

翔太がそばにいる。

それだけでどうしようもなく安心してしまうあたしがいるんだ。

心がぽかぽかと温かくなるのを感じた。


「ったく。また無茶して怪我なんかして、ほんっとうに馬鹿だなお前は」

翔太に反抗しようと思ったけれど、すぐに翔太が言った。

「でも、まだやれるだろ?」

翔太が不敵の笑みを浮かべている。

「当たり前」

あたしもニッと笑い返した。

あたしを一体誰だと思ってるの。


「あたしは、"ガーネット"の魔法使いなんだから」


そしてあたしは「"ホーリー・アロー"」と唱えた。

創り出した光の矢を構え、ヒュドラに向ける。矢の向こうに、ヒュドラが見える。


そして、放った。

鈍い音がして、ヒュドラの喚き声が聞こえてきた。

見事矢は命中し、ヒュドラは氷ごと砕けた。

胸に積もる、罪悪感。

あたしが、彼らを



「由良」

翔太の空色の瞳があたしを見据える。

あたしの名前しか言わないけれど、何が言いたいのかは伝わっているよ。

「分かってる」

あたしは笑って見せるけれど、翔太は無表情のままだった。

あたしのことを心配してくれているのかな? 翔太は優しいからね。

「大丈夫だよ」

罪悪感も抱くけれど…今は感傷に浸っている場合ではない。

1体は翔太が倒してくれた。

けれどまだ1体残っている。


「無茶するなって言っても、無駄だよな」

はぁ、と呆れたように溜息をついた翔太。

「うん」

笑顔でそう言うと、翔太はまた呆れたように息を吐き出した。
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