ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
「泣くのは、後だ。まだ、油断できないって分かってるだろ?」

翔太がまるで子供をあやすように、あたしの頭に手を乗せた。

「子ども扱いしないでよ…!」

そうやって反抗しても、

「まだ成人してないし、子供だろうが」

あっさりと交わされてしまう。悔しい。

悔しいけど、本当に泣いている場合じゃないので、あたしはゴシゴシと袖で涙を拭った。


「帰ろう、一緒に」


あたしがそういって笑ってみせると、翔太はふわりと笑ってくれた。

…翔太が笑ってる。

それだけであたしの心までぽかぽかと温かくなる。

本当に、好きだ。




あと少しだけ。


もう少しだけ。


戦おう。


大好きな人と、一緒に帰るために。




そう決意して、前を見据えた。

暴れまわる、一匹のヒュドラ。

口から毒を吐き出して、あちこちに増えていくガラクタと化した建物の残骸。

第一小隊が到着したという連絡もなければ、気配もない。

あたし自身、あちこち怪我をして、魔力も消費して、決して万全の状態ではない。


なのに、どうしてだろう。


心は、不思議なくらい落ち着いていて。

思考回路も、いつになく冷静で。

自分でも頭を傾げてしまうけど、答えは分かっていた。


隣にある、この温もりが。

大好きな、優しさが。

あたしの心を、支えてくれている。
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