ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
「ど、どうしたの!? びっくりしたじゃない!」

雅人の方を見ると、雅人はアハハと笑って後ろ髪をかいていた。

「あはは、悪い悪い。何でもねぇよ」

「もう! 何でもないならいきなり叫ばないで!」

悪い悪い、と言いながら、雅人は北斗に言った。

「いやー、まさかお前がそうだとはなー。そういうことか、へえ、お前も大変だな。苦労するな!」

何だか楽しそうな顔をしている雅人に、

「父さん、他人事、言わないで」

ムスっと北斗は少し不機嫌そうな顔をした。

と言っても、北斗はいつも表情がないので、ここまで不機嫌そうな顔をしているということは、今、相当不機嫌らしい。

そんなに雅人は北斗を怒らせるようなことを言ったのかな?

それこそ、北斗が怒るなんて滅多にないし、珍しいんだけど。

「あら、お父さん気づいていなかったの? 北斗が由良姐のこと…」

「だあああああああ! 七星はそれ以上言うな! それ以上言うとアイツを敵に回すことになるから、やめろ! それ以上言うな! 俺だってアイツには勝てねぇんだよ! 怒ったアイツはもう本当に手がつけられねぇんだからな!
北斗も、身のほどをわきまえろ!」

「えー」

「えー、じゃないだろ、七星!」

ぶー、と拗ねた七星を放っておいて、雅人は北斗に説教をしだした。

「北斗。あのな、その気持ちは分からんでもないが、考えろ。由良には翔太がいんだろ。あのド天然が振り向いたのが、たった一人だけ、アイツだけだったんだ。お前じゃ無理だ、無謀だ。報われねぇよ。悪いことは言わねぇ。諦めな」

すると静かな声で、知ってる、と北斗は言った。

「…報われない、苦労する、無謀…。知ってる、そんなこと」

でも、と北斗は言葉を続けた。

あたしは、こんなに喋る北斗も珍しいなあ、と見守っていた。

「でも、どうしても、諦められない」

苦しそうな顔をした北斗に、それ以上誰も何も言わなかった。


えっと、とあたしは3人に話しかけた。


「みんな、なんだか盛り上がってるみたいだったけど、何の話を、していたの? 何だかよく分からなくなっちゃったんだけど…」

その瞬間、水を打ったような静けさが訪れた。

暫くして、遠慮がちに七星が尋ねた。

「ゆ、由良姐、さっきの間、寝てたの?」

「え? 起きてたけど?」

そんなさっきの一瞬のうちに、寝るわけないじゃない。

「そ、そう。じゃ、じゃあ、は、話は聞いていなかったのね?」

「いや、話はずっと聞いてたよ? でも何だか分からなくなっちゃって。翔太の名前がでてきたけどよく分かんないし。何の話をしていたの?」
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