ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
あたしは必死に頭をフル回転させた。方向音痴を発揮させないように。

それだけではないんだけどね。

翔太のことを考えないように、必死で方向を考えた。

こっちが右だよね、と当たり前のことも全力で考えた。


翔太…

あたしのことなんて、きっと嫌いなんだろうな…

だって、こんなにも普通じゃないもんね…

強大な魔力を持っていて、同業者でライバルでもある"ガーネット"の娘で。

あたしみたいな彼女なんて、大変だよね。あたし今更分かったよ。

滅多に会えないし、会ってくれないし、そんなの嫌われて当然だよね。

別れるって言われても仕方がないのかも…


いくら翔太があたしに光をくれる存在だとしても、あたしは翔太に何もしてあげられない。

あたしがサファイアとの一件で翔太を助けたのは、ただの自己満足なんだ。

翔太からしたら、あ、ラッキー、くらいのことだったのかも。

本当に、あたしって駄目な子だな…


考え込んで歩いていたら、どうやら着いたらしい。

良かった、方向音痴を発揮しなくて。


そう思い倉庫の扉を開けた。


入った瞬間に感じる、魔法薬に使う薬草の匂い。

しかし薄暗くてよく分からないので

「"ライト"」

明かりをつけた。


「わぁ」

あたしは思わず感嘆を上げた。

置いてある物の量に、圧倒される。

ハーブのようにいい匂いのする物もあれば、蜘蛛やコウモリなどの死体などもある。

種類が豊富すぎる。

さすが、世界一の魔法薬屋、海音寺グループの倉庫…


感心しつつも、倉庫をしばらく見て回った。
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