ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
どうして、翔太はあたしなんかを選んだのだろうか。

翔太ならあたし以外にも選べたはずだ。翔太を好きにならない女子なんていない。有り得ないもん。

背が高くてかっこよくて、大魔法大学にトップ入学するほど頭が良くて、ちょっと不機嫌だけど本当は優しくて、おまけに"サファイア"の当主。

どこにも文句のつけようがないじゃない。これ以上何を望むの、というほど才色兼備。


それなのに、どうしてあたしだったのだろう。

あたしは、人を傷つけるほどの魔力を持っていて、おまけに"ガーネット"の娘。

こんなのを選ぶなんて、気が狂ったか、余程の物好きとしか言いようがない。


それとも、あたしがサファイアとの一件で翔太を救ったから、そのお礼だとでもいうの?

あたしと付き合うなんて、自分の気持ちを抑えて我慢してたのかな…?


あたしは、翔太のことが好きだよ。翔太が嫌いだとしても、この気持ちはそう簡単には代えられない。

だからね、翔太には幸せでいてほしい。それがどんな形であろうと構わない。


あたしと別れたら、翔太は幸せになれる…?


翔太が幸せになれるのなら、あたしにできることなら何だってする。


あたしが、手を引こう。


そしたら、翔太は幸せになれる。

あたしも、翔太が自分のことを嫌いなのかな、なんて辛い思いをしなくて済む。

一石二鳥じゃない。


よし、別れよう。

あたしには両親がいて、千沙さんがいて、美鈴と雅人がいて、"ガーネット"の仲間たちがいる。あたしは一人ではない。そうでしょう?

あたしはひっそりと決意した。



その瞬間、耳に届いたのは、





「由良!」





残酷にも、大好きな人の声だった。
< 60 / 170 >

この作品をシェア

pagetop