ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
声が聞こえてパッと顔を上げると、


「なん、で…」


翔太がいた。あたしの目の前に翔太がいた。

心臓は痛いほど鼓動する。

隠れたい。逃げたい。そんな思いが心と思考回路を支配する。

しかし足が動かない。あまりの衝撃に身体が石になったかのように動かなかった。あたしの足、お願い、動いて。今すぐ逃げたいの、この場から。

それよりも、

「どうして、ここに…?」


美玲や雅人と一緒にいたはずなのに…

あたし、会いたくなかったのに…


翔太は走っていたのか、呼吸が荒いままだった。息が切れてる。走ったのだろうか。けれど一体何のために?

しかし翔太は問いに答えず、あたしを引き寄せ抱きしめた。

強い力で抱きしめられる。しかし今までのような甘い感覚ではなかった。


ここから逃げ出したい。

そう思うのに、

このままでいたい。

そう思ってしまう自分がいた。


どうして?

あたし、離れなくちゃいけないのに。

あたしと翔太、両方を幸せにするために、あたしは告げなくちゃいけないのに。

どうして、このままでいたいなんて願ってしまうの?


そして気づいた。翔太の体が震えていることに。


「翔太…?」

どうしたんだろう。


しかし翔太は黙ったまま、あたしを抱きしめる力が強くなるばかりだった。
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