ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
「違、うの…嬉しすぎて…」


こんな風に誕生日を祝ってもらえたことが凄く嬉しくて、嬉しすぎて、涙が溢れるの。

初めてなんだ。

家族じゃない誰かに、誕生日を祝ってもらえたのが。

学園に来たのは9月だったから、16歳の誕生日はもうとっくに過ぎていたし、17、18歳の誕生日も寝て過ごしていたわけだから、今回が初めて。


それにね、


こんな風に美味しそうなケーキや、素敵なネックレス、笑っている翔太が…


その全てが嬉しすぎて、その全てが幸せすぎて、あたしの心のタンクが一杯になって、一定量を超えて溢れて出てきたの。

所謂うれし涙ってやつだね。


たかが祝ってもらえたことくらいで?って思われるかもしれないけれど、あたしにとっては大事件なんだ。


誕生日を祝う相手は、自分が大切に思ってる人でしょう?

だからね、祝ってもらえるってことは、自分がその人に愛されてることの、自分がその人にとって大事な人であることの、証だと思うの。

自分が、その人に必要とされているって分かるから、嬉しくってたまらない。

言葉にならないほど、嬉しいの。



翔太は未だに泣き続けるあたしを優しく抱きしめた。


耳元で、ごめんな、と囁かれる。


「え…?」


少しだけあたしを離すと、抱きしめた腕はそのままに、翔太は語りだした。


「俺たち、互いに立場があるだろ?俺は"サファイア"の当主で、お前は"ガーネット"の大事な大事な一人娘。誰が見てるか分からないし、そのせいでお前を傷つけたくはなかった。

おまけに、ただでさえお前は人の多いところに行けば凄い注目を浴びるし、老若男女問わず虜にするし、絶対迷子になってナンパされるだろうしな。

だから、街に行くとゆっくりできないと思って、家に招待したんだ」


注目を浴びて、老若男女を虜にし、ナンパされるのは確実に翔太だけだ。

そしてあたしは、迷子にはならない。


口にだして反論したかったけれど、口からはうまく言葉がでてこなかったので、それは叶わなかった。
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