最愛 ーサイアイー
「出てこれるか?」
「まだ……無理かも。」
「じゃあ、鍵だけ開けろ。俺が家まで連れていくから。」
一人で辛い思いをさせた。
俺の一言が美幸を苦しめた。
妊婦っつうのは、情緒不安定になると聞いたことがある。
そんな中で、夫である俺に、子どもの存在を否定されることに、
美幸はどれだけ怯えていたのだろう。
謝るべきなのは俺だろ?
美幸には幸せだけを感じて欲しいのに。
俺は、最低だった。
「ごめんな。」
鍵が開けられ、ゆっくりと開いたドア。
狭い、一人ぼっちの個室の中で。
美幸はうずくまっていた。