最愛 ーサイアイー
「謝らないで……」
美幸の血色の悪い顔が視界に入り、俺の胸の痛みが悪くなる。
あのとき、行為を拒んだのは、妊娠中だったから。
美幸は小さな命を必死で守っていたのに、俺だけが自分勝手だった。
「帰るか……?」
自分が情けなくて仕方ない。
こんな俺が父親になれるのだろうか?
「もっと喜んでよ……優也は、この子のたった一人の父親でしょ?」
美幸は、俺の表情を見て、悲しそうに微笑んだ。
そうだ。
俺も美幸も、良い父親に出会えなかった。
たった一人の父親に……たった一人の父親だからこそ、苦しめられた。
「そうだな。」
「うん…」