最愛 ーサイアイー
母親は、力無いまま、お兄さんに語った。
「そうか。……瑠衣、お前は本当に美幸ちゃんが好きなんだな。」
半分受け入れきれていない声が、室内に響いた。
「あんだけ溺愛していたもんな……でも、死んだら元も子もない。
思い合っていたお前らが、片方消えちまったら、もう片方はどうすんだよ…。」
軽い言葉なのに、お兄さんの表情はとても暗かった。
俺の番になると、俺は瑠衣には触らず、呟いた。
「馬鹿野郎。てめぇだから、美幸を任せたんだろぉが。
あいつをおいてくんじゃねぇよ。
また、あいつが壊れちまうじゃねぇか。」
橋本は泣いていて、俺のことを気にする余裕はないだろう。
俺は瑠衣に素でいられた。
「あんなメールまで残しやがって……。」
お前は予知でもしてたのかよ?
「俺は、本当はお前ぇが羨ましかった。」
美幸を真っ直ぐに愛していた、瑠衣が。