先生×私~隣の部屋の王子様~
次の日。
朝起きて、朝練のために体育館に移動する。
「おはよ、菜月。」
「あ、貴くん……おはよう。」
声がうわずる。
「昨日のこと……
忘れて。」
ボソッと貴くんは言い残してそのまま体育館に行ってしまった。
「部長!おはようございます!」
部員が次々と挨拶をしてくる。
部長の私は
体育館の入口で出欠をとっていた。
「おはよ。」
ドキッ))
先生の低い声が胸に響く。
「お、おはようございます!」
「…………。だから気をつけろって言ったのに。」
「え?」
「あ、いや。
ランニングしとけ。俺はメニューをボードに掲示しとくから。」
「はい!」
気をつけろって
何のことだったの?
うーん……ワカラナイ
部員を集めてランニングの開始。
その後朝ごはんを食べて
またトレーニング。
あっという間に二日目も過ぎていった。
貴くんとはあれ以来話してない。
そのままミーティングが来てしまった。
「えー、明日の朝で最後なので気を引き締めて行うこと!
あ、あと。これから肝試しするから。」
え?
肝試し??
「肝試しって、あの外まわるやつですか?」
「そう。くじ引いて、2人1組になってこの合宿所の周りを探索するやつ。
ちなみに……でる……らしいぞ。」
ゾクッ))
背筋が凍る。
「はい、くじ引いてー。」
部員は楽しそうにくじを引いていく。
次は私の番。
取った紙には 3 と記されていた。
「紙に書いてあった番号の人とペア組め!」
先生が言うとみんな一斉にペアを組みだす。
3番、3番……
「あ、俺もやるんだった。俺は3番ね。3番って誰?」
先生……?
「あ、私!!私3番です!」
「おぅ!朝日だったかー。」
「はい!」
くじの神様ありがとう♥
ホント感謝!
なかなか話すチャンスなかったしー♥
「んじゃ、1番から順に行ってこい!
何かあったら電話な!」
「「「はーい!」」」
次々と楽しそうに外に出ていくみんな。
「よし、行くか。」
「はいっ!」
外に出ると涼しい風が髪を撫でる。
林の中を通るらしい…………。
暗いし…………。
怖い…………。
「朝日ー?置いてくぞ?」
「ま、ま、待ってください。」
「あ、何。こーゆーの苦手?」
「に……苦手……。」
「ふぅーん(笑)意外だな。」
何がふぅーん(笑)だ!
ドS!
その笑みはなんなのよ!
「ほら、手。」
さっと先生が手を差し出した。
「え?」
「怖いんだろ?手握っとけば?」
「……いいんですか?」
ほらっ
と言って私の手を掴む先生。
思わず顔が赤くなる。
最初は怖かったけどだんだん慣れてきた。
ズンズン歩いていくと
林をぬけた。
そこは……海だった。
「うわぁ………………キレー…………。」
月明かりに水面が照らされて
キラキラ輝いていた。
「先生!キレイですね!」
「……。」
ん?
なんで先生止まってるの?
「先生……?」
「朝日…………。」
急に先生の顔つきが男らしくてドキッっとする。
「はい?」
「松本はお前を大切にしてくれると思うよ。」
え?
思ってもみなかった言葉が先生の口から飛び出した。
「先…………生…………?」
「昨日、告白されてただろ?」
「え?!……聞いてたんですか?」
「偶然な。」
「で、でも……返事は…」
「松本ならお前を守ってやれるよ。
辛い思いもさせないし、大切にしてくれる。」
なんで…………?
先生?
どうしてそんなこと言うの?
「一人暮らしのことも知ってんだろ?
早く返事してやれよ。」
先生は知らないんだ……
私が貴くんの告白を断ったこと。
「だから……もぅ、返事は……」
「朝日。幸せになれ?」
先生の顔が月明かりに照らされる。
なんで……?
どうしてそんな悲しそうな顔をするの?
どうして…………
私は…………先生が好きなのに……。
ポロッ))
涙が溢れた。
「朝日?」
「先生は……私の気持ちなんか知らないくせに!!
わ、私にだって感情くらいあります!私の……私の幸せは……そんな簡単じゃない!」
思わず叫んで走り出していた。
「お、おい!菜月!!」
バカだね、私。
こんな時だって名前を呼ばれてドキドキしてる。