ベジタブル

 二人の年齢は、十代後半。以前に一度だけ聞いたことがあったが、詳しい年齢は覚えていない。すぐに諦めてしまうと思ったのが一番の原因だが、今思えば失礼なことであった。しかし、二人の名前は覚えていた。レイとディラン――毎日、何度も名前を呼んでいるので記憶している。

「そうだけど……」

「弟子入り記念で、野菜を贈る」

「あ、有難うございます」

「よし! 決定」

「だから、勝手に決めないで下さい。ですが、そこまで言うのでしたら考えておきますが……」

「おっ! それはいい」

「何だか、乗せられた感じがします」

「いいってことさ」

「では、僕は行きます。この野菜を使用して、美味しい料理を色々と作らないといけませんので」

「吉報を待っているよ」

「わかりました」

 店主の言葉にジークは苦笑しつつ、駆け足で自身の店へと向かった。その後姿を見送る店主は、ひらひらと手を振っている。そして店主の頭の中では、噂の二人はもう弟子となっていた。

 弟子を取れば今以上の美味しい料理が食べられるとわかっていたので、店主の口許が徐々に緩みだす。しかしいつまでも笑っている暇はなく、目の前の客に集中しないといけない。

 何より客はジークだけではないので、稼げる時に稼いでいかないといけない。店主は新しい客とのやり取りに奮闘し、少しでも多くの野菜を買って貰おうとする。この瞬間、客との値切り交渉が開始された。


◇◆◇◆◇◆


 ジークは店に到着すると、勝手口から店内に入る。それと同時に、元気がいい声音が店内に響き渡った。この騒々しいに近い声音は、普段から聞き慣れている。そう、声の主は先程話に上がった人物達。

 流石、料理人を志す人物なので、身形はいい。全体的に清潔感が漂い、ジークのより素晴らしい外見をしているといってもいい。だからといって、一応外出先ではきちんとした服装をしているのだが、ジークの私生活の面は褒められたものではない。現に、寝起きは最悪である。
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