ベジタブル
また、両者の間には高い信頼関係があるので、彼等は多少の無理難題を聞いてくれる。そのお陰で世界中の美味しい野菜を提供して貰え、それに比例して店に訪れる客も増えていった。
「小ぶりだね」
「いけなかったか?」
「いや、そういう意味じゃない。野菜は、大ぶりでも不味い物もある。だから、気にしなくていい」
「そうなんだ」
「一般の主婦は、気にしていないけどね」
「……確かに」
ジークの説明に、アランは何度も頷く。彼の職業はトレジャーハンターなので、遺物や古代の日用品・それに習慣は理解している。しかし野菜は全くの専門外なので、アランにとってジークの言葉は呪文に聞こえてしまい、目を丸くしきょとんとした表情を浮かべていた。
アランの愉快な表情にジークは口許を緩めると、更に野菜について熱く語っていく。勿論、アランにとってちんぷんかんぷん。言葉の端々に登場する単語はまるで異世界の言葉のようで、アランの頭を混乱させていく。そして「説明はいい」と言うが、ジークの言葉は止まらない。
そして、十分後。やっと、説明が終わった。
「という訳です」
「そ、そう……」
「理解しましたか?」
「ま、まあ……」
「それならいいです」
一通り細かく説明したことに満足したのか、ジークは嬉しそうであった。だが、聞かされた側は堪ったものではない。お陰で精も根も尽き果てる寸前まで陥っており、顔色が悪い。
「しかし、変わっているね」
「だから、他人は他人だよ」
「まあ、金品を求められるよりはいいか」
「そう言う人は、多いですよ」
「やっぱり」
情報料は聞く内容によって相場は様々であり、相手によって求める物もまちまち。その大半が金品を要求され、中には法外な値段を要求する情報屋もいるという。それを考えれば、ジークの「野菜が欲しい」というのは、実に優しい。それに、情報の信憑性も高かった。