ベジタブル
「弟子入りの件って、今でも考えているのかな? 別に考えていないというのなら、いいけど」
「そんなことは、ありません」
「そう?」
「はい!」
「なら、弟子入りする?」
「も、勿論です」
「お願いします」
興奮したような声音が、部屋の中に響き渡った。彼等は「いつかは――」と考えていたのだろう言葉を発したと同時に、互いの顔を見合わせる。信じられないという表情を浮かべていた。
まさかジークの口から、そのような言葉を言われるとは想像もつかなかったからだ。それによりレイとディランは抱き合うと、その場で跳躍していく。そして、小躍りをはじめた。
「こら、埃がたつ」
「す、すみません」
「喜ぶのはいいが、自分の職業を自覚するように。埃が入った料理を客に、提供するというのか」
「い、いえ」
「大変失礼です」
しかし言葉でそのように言っているが、態度が伴っていない。その証拠に、二人の口許が緩んでいる。やっと念願が叶ったのだから仕方がなく、二人の気分は舞い上がり頭の中は花畑状態だ。
「宜しく」
「はい!」
「明日から、本格的にはじめる。と言って、今日は手抜きをしないように。それは、わかっているな」
「頑張ります」
「了解です」
「元気が良くて、逆に不安だ」
「大丈夫です」
「お任せ下さい」
会話の終了と同時に、レイとディランはジークに向かって敬礼を見せた。その態度にジークは苦笑を浮かべると、楽しい生活がはじまるということを認識した。嬉しそうに、はしゃぐ彼等の姿。立派な大人と認識していたが、それはそれで可愛らしい一面を持っている。