*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
沙霧とそんな会話を交わしながら、疾風は泡雪が気になって仕方がない。





あまりにも異様な姿形をしているからだ。




疾風は沙霧の腕を引いて、泡雪から離れたところまで連れていくと、こそこそと訊ねた。






「…………沙霧。


いったいその娘は、誰なんだ?」






「え? だから、泡雪だよ」






「いや、名前は分かったが。


俺が訊きたいのは、どこの誰なんだ、ということで………」







そこまで言ってから、疾風は口を噤む。






(………いや、そんなのは、どうでもいいんだ。


この山に住む盗人の誰についても、俺は出身や素性なんて知らない。



白縫山に住むために、そんなことを互いに知る必要なんか、全くないんだ)






そう考えて、疾風は質問を変えた。







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