*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「あの娘ーーー泡雪は、あんな薄着一枚で、こんな雪山にいたのか?


蓑を着ていてさえ寒いこの山に………。



もしかして、どこからか攫われてきた娘なんじゃ………」







沙霧はにっこりと笑う。







「泡雪については、わたしもよく知らないんだ。


泡雪だ、ということと、あとは、寒さにとても強い、ということだけしか………。



ただ、彼女はこの山で生まれて、自分の意志でここに住んでいる、ということだけは確かだよ」






「ふむ………」







答えながら、疾風は内心で首を傾げる。







(この山に、俺たち以外に住んでいる人間がいたのか………しかも、うら若い少女が………)







白縫党の盗人以外の人間など、山の中では見たことも会ったことも、話に聞いたことさえもなかった。








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