*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
考え込むように顔を傾けている疾風を見上げて、沙霧が口を開く。






「………泡雪は今、怪我をしているんだ」





「えっ」






疾風は目を見開き、ぱっと振り返る。






入り口でぼうっと佇んでいた泡雪は、玉梓に手を引かれて中に導き入れられているところだった。





その足を、確かに、少し引きずるようにしている。





疾風は沙霧に向き直り、訊ねた。






「………足か」






沙霧はこくりと頷く。






「あぁ、足だよ。


腕にも怪我をしている。


だいぶ治ってきたんだが、まだひとりで暮らすのは心配だ」






「そうか………」






呟くように言ってから、疾風は「あ」と声を上げる。






「それが理由か!」





「え?」




「お前の様子が最近おかしいって玉梓が心配していたんだよ」





「あぁ………そうだったのか」






沙霧は少し照れくさそうに笑った。








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