*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語







「…………ふぅ」





文机(ふづくえ)の前に座って手習いをしていた朝日宮は、溜め息を洩らして筆を置き、脇息にもたれて頬杖をついた。




物憂げな様子に気づき、母の明子は首をもたげる。







「朝日、どうしたの。


元気がないわね」






「いえ………少し疲れてしまっただけですよ」






「それにしては、手習いに集中できていないみたいだったけど?」






「………お気づきでしたか」







朝日宮は眉を下げた。




やはり、母に誤魔化しはきかない。







「何かあったのでしょう?


お母さまに話してごらんなさい」







母の優しい笑みに、朝日宮は頷いた。








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