*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
親の贔屓目を抜きにしても、素直で誠実な気性と、努力を苦としない堅実な性質は、まことに誇るべき素晴らしい長所だと思われた。




身分も家柄も、もちろん奥津宮に比べて遜色はない。





それらのことをよくよく考え合わせてみれば、日嗣の御子に関する話題において朝日宮に矛先が向かないはずはなかった。






(五の宮さまがおられない今………。


有力な皇子を推薦し、その皇子を即位させることで、自分たちの将来を盤石としたものにしようと画策している公卿たち。


彼らが、朝日宮を見逃してくださるわけはなかったのだわ………)







『百年に一人の皇子』沙霧宮の失踪により、抗いがたい時代の流れの渦の中に、にわかに巻き込まれつつある………。




そのことを思い知り、明子と朝日宮は、溜め息とともに不安げな視線を合わせるしかなかった。







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