*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語








「ーーー朝日」





朝日宮が内裏の透渡殿(すきわたどの)を歩いていると、向こうからやって来た奥津宮が気づいて声をかけてきた。






「奥津お兄さま、ご機嫌うるわしゅう」




「あぁ、朝日も元気そうでなによりだ」






奥津宮は足を止め、ちらりと後ろを振り返った。




朝日宮もつられたようにそちらに目を向ける。





ゆったりとした足取りでこちらへ向かって来たのは、奥津宮の外祖父・兼正であった。







「宮さま、お久しゅうございますな」





「えぇ、中納言どの。


ご無沙汰しております」






目の前に並んだ、背の高い奥津宮と大柄な兼正に見下ろされる形になり、朝日宮は圧迫感を感じる。







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