*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
ごくりと唾を飲み込んだ朝日宮を、二人の男の視線が射る。
「―――――朝日よ、もう聞き及んでいるのだろう」
奥津宮が低く問いかける。
「お前をぜひにも日嗣の御子に、と主張する者たちが少なからずいるのだということを。
いくら世間知らずで箱入りのお前でも、この後宮にいて世継ぎに関する噂話を聞かずにすむわけがない」
「…………はい」
言い逃れなど到底できそうにない雰囲気を敏感に感じ取り、朝日宮はこくりと頷いた。
奥津宮は険しい面持ちで朝日宮を見下ろしている。
「………まったく、上達部(かんだちめ)も殿上人(てんじょうびと)も、現金なやつばかりだな。
ついこの間まで、沙霧宮の代わりは私しかいないなどと、媚びへつらい、へりくだっていたというのに。
手の平を返したように今度は朝日、朝日だよ」
毒のある言い回しに、朝日宮は言葉もなく奥津宮を見上げるしかない。
奥津宮の愚痴はさらに続いた。
「―――――朝日よ、もう聞き及んでいるのだろう」
奥津宮が低く問いかける。
「お前をぜひにも日嗣の御子に、と主張する者たちが少なからずいるのだということを。
いくら世間知らずで箱入りのお前でも、この後宮にいて世継ぎに関する噂話を聞かずにすむわけがない」
「…………はい」
言い逃れなど到底できそうにない雰囲気を敏感に感じ取り、朝日宮はこくりと頷いた。
奥津宮は険しい面持ちで朝日宮を見下ろしている。
「………まったく、上達部(かんだちめ)も殿上人(てんじょうびと)も、現金なやつばかりだな。
ついこの間まで、沙霧宮の代わりは私しかいないなどと、媚びへつらい、へりくだっていたというのに。
手の平を返したように今度は朝日、朝日だよ」
毒のある言い回しに、朝日宮は言葉もなく奥津宮を見上げるしかない。
奥津宮の愚痴はさらに続いた。