*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「確かに、最高の皇子と呼ばれた沙霧宮に最も近い血縁を持つのはお前だからな。


伝統と血族に弱い貴族たちの目が眩むのも仕方がないか」






「……………」







朝日宮は何と答えればいいか分からず、ただ口を噤んだ。




奥津宮はそこで大きな溜め息をつき、不機嫌な面持ちで続ける。







「………しかしまぁ、やっとのことで目の上のたんこぶが消えてくれたと思っていたら。


まさかお前のような新しい障害が出てこようとはな………」






「…………え」






「宮さま!」








不満げに頬をこすりながら、ぶつぶつと独りごちていた奥津宮を、兼正は小さいながらも鋭い声音で制した。







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