*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「後から聞いた話だけど、そのころ山の麓で、人間たちが妖に命を奪われることが続いていたそうだ」







それはもちろん、妖狐の仕業などではなかった。



妖狐は皆、人間と同じくらいの知恵を持っており、情も深く、理由もなく人間を傷つけるような者はいない。




しかし、妖であるということだけで、その猟師は妖狐を忌み嫌い、恐れたのだろう。




襲いかかってきたわけでもない親子連れの白狐を見ただけで、恐怖にとらわれ、有無を言わせずに矢を放ったのだ。







人ならぬものを無条件に恐れた猟師の気持ちも、理解できないでもない。



それだけに、沙霧は、胸の塞がるような無念さを感じた。








「………だから、君は、人間を嫌いだと言っていたんだな」







沙霧は目を伏せ、乾いた声で呟いた。








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