*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
泡雪は、ふ、と小さく笑う。






「………そうだな。


嫌い、というよりは、恐かったのかも。



人間は、何を考えているのか分からない、と思っていた。


私を見る人間の目は、いつも暗くて、冷たくて、苦しそうだった。



だから、苦手だったんだ」







泡雪の笑みが、ふわりと大きくなる。







「お前は、ぜんぜん違うけどな。


お前は何を考えてるか、すぐに分かる。



疾風も、玉梓も、ほかのみんなも。



ここに住むようになってから、べつに、人間が嫌いだとは思っていない」







「それはよかった」






沙霧はほっとしたように息をついた。





沙霧がなかば強制的に白縫党の暮らしに連れ込んだ形になったことを、泡雪はどう考えているのかと、不安に思っていたのだ。





しかし、泡雪が嘘や建前を話すことはないとよく分かっているので、今の言葉は心から嬉しく思えた。








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