*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「………君は、もしかして、雪鬼か?」






「…………は?」







少女はさらに眉根を寄せて、低く唸った。






「…………あんなものと、一緒にするな」






「…………あ、ごめん」







抑えられた怒気を感じ、沙霧は反射的に謝った。





真っ白な見た目と、寒さを感じないらしい身体。




きっと雪女などの雪鬼の類なのだろうと考えたのだが。






………しかし、一緒にするな、ということは、この少女はいったい何者なのだろう。





とりあえず、普通の人間ではないのは確かだと思うが。







訊ねたいと思ったが、少女の険しい表情を見ていると、ただならぬ気を感じて言葉が咽喉に詰まってしまう。







(…………まぁ、いいか、なんでも。


見ざる、言わざる、聞かざる。


知らぬが仏、と言うしな………)







沙霧は一人、自分にそう言い聞かせた。







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