*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
沙霧は目を見開いて、小さく頷く。





そして、両手いっぱいに雪を掬い、立ち上がった。





その様子を、少女はじっと眺めている。







沙霧は雪を掲げたまま、少女のもとへと戻った。




手のひらの雪を、少女の口許に差し出す。






「………これを食べるといい」






「……………」






少女は黙ってその雪を凝視する。




沙霧がさらに口許に近づけると、少し迷惑そうな面持ちになった。





それでも沙霧はめげずに言い募る。






「咽喉が渇いているのだろう?


人の親切は黙って受け取れ、と昔から言うではないか」





「……………」






少女は眉をしかめたまま、仕方なさそうに沙霧の手に唇を寄せた。





紅い唇の間に雪が溶けこんでいくのを、沙霧は満足そうに眺めた。









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