*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「あと、もう一つ。
朝日にも一切手を出すな、と兼正どのに伝えてくれ。
朝日は無欲で穏やかな質だから、まさか世継ぎの位を望むことはないだろう。
奥津宮を脅かすことはないはずだ。
だから、朝日だけは助けてやってくれ。
できることなら直接お頼みしたいところだが、どうせわたしは、兼正どのに会わせてはいただけないのだろう?」
どこか諦めたような、まるで自らの死を覚悟しているかのような口調に、黒鶴は思わず首を横に振った。
「なにもそのようなことは……。
殿はただ、沙霧宮さまが皇位継承権をお捨てになって宮中を離れ、世継ぎ争いから遠ざかっていただくことをお望みなだけです」
その言葉に、沙霧はくすりと笑った。
「………いくら疎いわたしでも、そのように甘い考えはしていないよ。
わたしが遠くの土地に流れたところで、奥津宮が日継の皇子になるためには脅威であることには変わらないだろう。
兼正どのは、わたしが現世を離れることを望んでいるに違いない」
「……………」
朝日にも一切手を出すな、と兼正どのに伝えてくれ。
朝日は無欲で穏やかな質だから、まさか世継ぎの位を望むことはないだろう。
奥津宮を脅かすことはないはずだ。
だから、朝日だけは助けてやってくれ。
できることなら直接お頼みしたいところだが、どうせわたしは、兼正どのに会わせてはいただけないのだろう?」
どこか諦めたような、まるで自らの死を覚悟しているかのような口調に、黒鶴は思わず首を横に振った。
「なにもそのようなことは……。
殿はただ、沙霧宮さまが皇位継承権をお捨てになって宮中を離れ、世継ぎ争いから遠ざかっていただくことをお望みなだけです」
その言葉に、沙霧はくすりと笑った。
「………いくら疎いわたしでも、そのように甘い考えはしていないよ。
わたしが遠くの土地に流れたところで、奥津宮が日継の皇子になるためには脅威であることには変わらないだろう。
兼正どのは、わたしが現世を離れることを望んでいるに違いない」
「……………」