*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「…………そうだ!


わたしが名をつければよいのか!!」






「……………」






少女は微かに目を瞠り、目の前の沙霧を見つめた。




沙霧は自分の思いつきに、満足気に頷いている。






「そうだ、わたしが君の名前をつけてあげよう。


さぁ、どういう名が良いかな………」






沙霧は首を捻り、頭を悩ませる。





顔を俯けたところで、自分の袖についた白いものが目に入った。





先ほど雪を掬ったときに、袖が地面をかすったらしい。





ふわふわと白いものが、泡のように袖口を覆っていた。







きらりと輝く、雪の結晶。






沙霧は目を奪われる。










「ーーーーー泡雪(あわゆき)」









その言葉は、自然と口をついて出た。









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