*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
「ーーーーー泡雪………泡雪」







沙霧は確かめるように繰り返し、その名を唇の上に反芻した。







そして、微笑んで顔を上げ、少女を見つめる。







「君は、今日から………泡雪だ」





「……………」






少女は怪訝そうに沙霧を見つめ返す。





その華奢な手を、沙霧はそっと握った。






「………言ってみてごらん。


君の名を、君の口でーーーーー」






「……………」






「ほら、言ってみて。泡雪、だよ」







どこか戸惑ったような少女の手を、沙霧はさらにぎゅっと握りしめる。







「泡雪ーーー美しい名だ。



君にぴったりだ………。



真っ白で美しい、君に…………」







「……………私の、名前」







少女は低く呟いた。




沙霧が促すように優しく頷く。







「……………あわ、ゆき………泡雪」







琥珀の瞳を見開いて、かみしめるように、少女は囁いた。








< 37 / 400 >

この作品をシェア

pagetop