*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
沙霧宮からの文を握りしめていた朝日宮が、ふいに顔を上げた。





「お母さま」





決然とした声に、明子は瞬きをして頷く。




朝日宮は母に目を向け、確かめるようにゆっくりと口を開いた。





「お母さま。


私はーーー出家いたします」





はっきりと、朝日宮は言った。




明子はこれ以上ないほどに目を瞠る。





「………出家?

ほ、本気なの………?」





出家をするということは、現世を捨てるということ。



世間との関わりを絶ち、家族への未練も捨て、ただただ勤行の日々を送る。



つまり、死んだも同然なのだ。




まだ年若い朝日宮が、出家をすることは、母の明子にとってはあまりにもつらいことだった。





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