*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
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「………へえ、そんなことがあったのか」
父の疾風の長い話を聞き終え、群雲は目を丸くしていた。
「内裏っていうと、帝のいる高貴な場所だと思ってたけど、なんて恐ろしいところなんだ。
自分が皇位につくために、実の兄さえ殺させるって………どうかしてるよ。
まさか、あいつの親が、そんな酷い目に遭ってたなんて………」
今年で十になる群雲が、不愉快そうに顔をしかめて、大人びた口調で言うのがおかしくて、疾風は思わず笑った。
「あっ、なんで笑うんだよ、親父!
真面目に話してるのに!」
「いやぁ、お前も大きくなって、生意気な口をきくようになったもんだと、感慨深くてなぁ」
「子供扱いしやがって!」
群雲が元気よく疾風に飛びつくさまを、周りの男たちが豪快な笑い声を上げて見守っていた。
この十年で、白縫山にはたくさんの盗賊たちが集まり住むようになり、女子供も増えて、いっぱしの村のように変貌していた。