*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
丸まった泡雪に腕枕をしたまま、沙霧は考えを巡らせるが、何を考えればいいのかも分からない。




ただ、泡雪の薄い衣ごしに伝わってくるあたたかい温もりを、とてつもなく愛おしく感じる。






(…………わたしが寒がっていたから、こうやって温めてくれたのだ。



雪に埋れたわたしを置いてけぼりにしようとしたときは、なんと情けのない奴だと驚いたが………。



すこし口数が少ないが、心優しい娘ではないか。




………いや、口は災いの元と言うしな。


へたに言葉数の多い者より、信頼がおけるかもしれない)






沙霧はそう思って、くすりと笑った。




そのとき、泡雪が小さく声を上げた。




沙霧がその顔を見下ろすと、薄い瞼がすっと開かれる。




澄んだ琥珀色の瞳が、まっすぐに沙霧を見つめ返した。






(目は口ほどに物を言う、ということわざがあったな。



たしかに、泡雪は無口だが、この瞳を見ていれば、いかに美しい心の持ち主か分かるというものだ)






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