*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
帝の催す宴とあって、懸盤(かけばん)の上に並べられた料理も酒も、たいそう豪奢なものだった。





各地から献上された珍しい作物や山菜、新鮮な海の幸を、大膳職(おおかしわでのつかさ)の役人が矜恃をかけて調理させた饗宴の食事。




都の北から取り寄せられた、濁りのない最高級の清酒。






美味なる料理に舌鼓を打ち、中庭から流れてくる管弦の調べに耳を傾けながら、帝と皇子たちは穏やかな雰囲気で宴を楽しんだ。





これまで、帝の話し相手はもっぱら沙霧宮であることがほとんどだったが、今宵は奥津宮が主となって相手をつとめる。





他の皇子たちはそれに相槌を打つばかりだった。






和やかな宴の席の中で、やはり朝日宮だけは浮かない表情で食事も喉を通らずにいる。






(沙霧お兄さまがいらっしゃらないだけで、なんだか桜のない花見、朔月の日の月見のように味気ない。



…………あぁ、お兄さまにお会いしたいものだーーー)







朝日宮は小さく溜め息を洩らし、粉雪の舞い踊るどんよりとした雪曇りの夜空に浮かぶ、朧ろな月を見上げた。








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