もしも君と恋ができたら


そばまでやって来た美香さんはわたしに気づき、小さく首を傾げた。

耳につけられた大振りのピアスが、きらりと揺れる。


「誰その子。もしかして新しい彼女?」


しょうくんはちらりとわたしを見てから、首を横に振った。


「いや……面倒みてる子だよ」


面倒みてる子、って。

そりゃまあ、そうだけど……


美香さんはしょうくんの返事に、にやりとして腕を組む。


「何それ。あっやしー。結子ちゃんはどうしたのよ結子ちゃんは」


「あー、別れた」


「そうなの?」


会話に加わるでもなく、親しそうに話すしょうくんと美香さんをしばらく見ていた。


「……」


二人を見ているうちに、体の奥からじわじわと嫌なものが込み上げてきた。


この嫌な感覚の正体を、わたしは知っている。


初めてそれを感じたときの記憶を思い出して、だんだん胸が苦しくなってきた。



我慢できなくなってしょうくんの袖を引っ張った。



「お腹すいたからお菓子買ってくる」


しょうくんの返事も待たずに、わたしは急いでその場を離れ、売店に行くふりをして女子トイレに駆け込んだ。


個室の中に入ると鍵をかけ、小さく息を吐いて胸にそっと手を当てた。



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