食べてしまいたい
*
「かーっ!うまーっ」
「お前はオッサンか。色気のいの字もねぇな」
「放っといてよ。っていうか、あんたの前でフェロモン出す必要ないじゃん。もったいない」
「もったいないって。そういう問題か?」
思わず盛大なため息が漏れる。
まあ確かに。色気だのフェロモンだのを気にするのなら、男の部屋で胡坐をかきながら缶ビールなんぞ飲まないだろう。
「で?なんで酒なんか飲みたい気分なんだ?」
「あん?」
彼女は明らかに不機嫌な声で、俺を睨みあげた。
お前はヤンキーか、コラ。
「理由がなきゃ飲んじゃいけないのかぁ?」
こらこら、絡むな。ペース早すぎるんだよ、馬鹿。
「普通なんかあったのかなぁって思うだろ?缶ビールあほみたいに買い込んでいきなりやって来たら。俺がいなかったらどうするつもりだったわけ?」
「夜はたいてい家にいるじゃん。てか、優太の部屋、電気ついてたし」
そう言ってこの女はカラカラと笑った。
……くそ。なめやがって。
確かにたいてい家にいるけどさ。
さほど用もねぇけどさ。
たまには連れと飲んでたり、残業してたり、レンタル屋に行ってたり、コンビニ行ったり……
やめた。
虚しくなってきた。
どうせ、彼氏と喧嘩でもしたんだろ?
喧嘩できる相手がいるだけいいじゃねぇか。
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