続.不器用恋愛
真新しいシステムキッチン、必要最低限の調理器具。知らない誰かがここに立って、啓吾に料理を振る舞ったんだろうか、と思って首を振る。そんな事考えても仕方ないじゃない。啓吾と付き合い出して余計な事ばかり考えてしまう。
なんで、こうも着地の決まらない恋愛なんだろう。
「ぎゃっ」
考え事をしていたせいで、不意に首筋に走った感触に思わず有りの儘の声を上げた。
「…なんつー声出してんの?」
いつの間に側にきてたのか、その原因を作った本人は呆れた顔で、だけど悪戯な口元だけは色気たっぷりに舌を出して、またあたしの首筋を舐めた。
「ちょ…やめ」
今度は色を変えたその流し目さえ、悩殺されそうな色気を含んで、背中にゾクリとした感覚が走る。
啓吾は筋の通った腕をあたしの腰に回して、左手でそのまま顎を持ち上げる。 食器を洗う為に泡のついたあたしの両腕は為す術もなくて、
「…んっ」
重なる唇は甘くて、深くて、絡まる舌に息をするのさえ忘れそうになる。
…この、変態っ、
あたしが身体を振り解こうと腰を曲げた瞬間、
啓吾の力が弱まって、瞳はあたしの手元を見つめた。