猫を追いかけて……。【短編】
ーーーやっぱりね。

夢は目が覚めたら
何もかもなかったかの様に消えてしまう。

彼もパタリと消えてしまった。

初めからなにもかもなかったかのように。

私は長い長い夢を見ていたんだ。
そう思うと私はまた以前と同じ生活に戻った。

細い細い入り組んだ坂道を
のらりくらりと
何をするもでもなく歩いていた。
と言っても
何故か、あの場所に足は
向かなかった。

何となく、
彼が居なくなった事を
認めたくなくて
どこか、夢ではなく真実だったんだと
思い知らされるのが怖くて

あの場所には行かなかった。



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