猫を追いかけて……。【短編】
またいつもの様に
お隣の耳の遠いお婆さんの
季節は間もなく桜が咲こうと
しているにも関わらず
「暑くなるかね。」
との問いかけに
同じ言葉を返しながら
のらりくらりと坂道を歩く。

曲がりくねった坂道を
すっかり慣れた様子で
軽やかに上っていく私の前に
いつもの野良猫が現れた。

夕べも私の庭先に来て
煮干しを散々食べていったトラだ。

「珍しいわね、こんなところで会うなんて。
トラ、どこいくの?」

何となくトラの後を追いかけた。

トラは時折、立ち止まりながら
先へと進んだ。

まるで私をどこかへ案内するかのように。

そして私もそれについて行くように
後を追った。

辿り着いた場所は
あの海の見える場所たった。

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