猫を追いかけて……。【短編】
「やっと、見てくれた。」

カシャッ

「俺はずっと見てたのに。」

カシャッ

「待ってた、ここに来るのーー」





そこまで言うと彼は
漸くファインダーから
目を離し、直に私をまじまじと見た。

「ごめん。綺麗だったからついーーー。」

にこやかに笑いながら言う
猫の様に少しつり上がった彼の瞳は
透き通る様な茶色をしていて
髪も陽の光を浴びて更に
金色に輝いていた。

「えっと……。」

「君、全然俺のこと
見てくれないからこりゃ、脈ないな
って、諦めようかと思ったよ。
だけど諦めなくて良かった。」

私が何も言えずにいると

「不思議とやっと会えた気がする。」










彼はそう言うとまたファインダーを覗き
カシャッと一つ
シャッターを切った。

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