猫を追いかけて……。【短編】
「おはようございます。」

「今日も暑くなるかね。」

「多分ね。
さっき、天気予報で言ってたわ。」

お隣に住む耳の遠いお婆さんに
声を掛けられ
昨日と丸切り同じ言葉を返す。

何もかもが変わらない。
毎日、同じ顔ぶれを見て
毎日、同じ会話が繰り返され
私は今日も生きているんだ
ってことを確認する。

細い坂道を進んでいくと
タイルが敷き詰められた小路も
古い映画の舞台となった
あの階段のある神社も。
毎日変わらずそこにあって
私に安心感を与えてくれる。

初めて来た土地なのに
どこか懐かしさ
穏やかさを与えてくれる。

私はこの土地が好きになっていた。
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