猫を追いかけて……。【短編】
私は海の見える展望台へと
やって来た。

これといって毎日
何かやることが有るわけでもなく
誰かに急かされることもない。

いくらでも好きに使える時間を
私はよくこの場所で過ごした。

手前に広がるごちゃごちゃと
密集する家達は
まるで子供が積み木を
ばら蒔いたように
整列を成すことなく
そこにある。

その先に広がる
瀬戸内の穏やかな海を
眺めていると
何も考えず時だけが過ぎて行く。

時だけが過ぎて行く。










カシャッーーーー

不意に穏やかな景色を
切り刻むかのような
機械音が私を現実に引き戻した。






< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop