猫を追いかけて……。【短編】
それからも
その場所に来るとやはり
猫人間の様な彼はいてーーー

名前、聞いてないな。
そもそもあんな風貌の彼に
名前はあるのかしら?

そんな疑問を抱きつつも
私は彼がこちらにレンズを向けることを
拒むことはしなかった。

彼と過ごす時間は
とても不思議なものだった。

大した会話もなく
静かなその場所にただ
無機質なシャッター音が鳴り響く。

私は何をするでもなく
そこにいるだけ。

そうしているうちに
私の中にあった違和感。

ーーーー彼は何故、猫なのか?

そう言った思いは
シャッター音と共に
切り捨てられていった。

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