今夜、君とBloodyKiss
「ごめんね。」
そう呟けば彼は少し拗ねた表情で「もういいです。」と返す。
その表情が少し面白くなってしまい、更に言葉を重ねる。
「それにしてもいい身体つき…」
「忘れてくださいっ!!」
「ごめんごめん。」
身を乗り出してくる彼に落ち着くように両手を振る。
本当にいい反応をしてくれるから面白い。
赤い顔でそっぽを向いてしまった彼の名前は、相馬紫希。我が料理研究サークルの後輩だ。
「ほらほら。すねないでー。」
軽そうな見た目の割にとても純情。これは、日々が過ぎて行く中で発覚したことだ。
「って!ボタン!相模さん!!勝手に外さないでください!!!」
そして、からかいがいのあるこの反応である。
当然、サークル内のいじられキャラへと定着したのだ。
「かけ間違ってるの!直してあげるんだから、大人しくしなさい」
「じ、自分で出来ます」
蚊の鳴くような小さな声だったので、聞こえていたけれどもスルーさせていただく。彼も杏里の手が止まらないことが分かったのか、大人しくそっぽを向いている。ただ、耳が真っ赤に染まっているのを見ると面白い。