今夜、君とBloodyKiss
「あ、そういえば結の誕生日来週だね?」
「ああ、もう来週なんだ。思ってたよりずっと早かった。」
そう言った結はいつもと変わらない感じだったのだが、どこか引っかかる感じがあった。どこかと聞かれれば曖昧にしかわからない。これも、一年の付き合いだからだろうか。と思っている間に、真後ろから声が降る。
「そうかー、結斗20歳だっけ?成人だな」
「うぇ!?」
「ちょっと、爽佑さーん?手、手。」
爽佑の声が後ろから聞こえたということは、振り返ってみれば案の定真後ろに爽佑がいた。
「大きくなって寂しいなあ、」なんて言いながら何故か杏里の腰に手を回し、後ろから抱きしめている状態だ。彼のスキンシップの激しさは今に始まったことではないが、慣れない。これだけは慣れない。
笑顔でちょいちょいと忠告を入れる結の表情が引きつっている。
どうしたものかと考えれば、能天気な声が部屋に響く。
「私も早く成人したーい!」
駄々をこねるように、手足をバタバタさせる雪菜を横目に呆れた表情で紫希が悪態をつきながら、あぐらをかいた膝に肘を載せる。
「お前が俺より年上って信じられないよな」
「んだと、もっぺんいってみろやああ」
可憐美少女からは予想もできない低い声で紫希に掴みかかる。
「なんだよ!掴みかかるなら俺じゃなくて、椎葉さんだろ!」
「杏里ちゃんに近づく奴があんた以外だったら誰でもいいわよ!!!」
「それは横暴だろ!?」
ーーーみんな、結の誕生日忘れてたのかな?
そっと結を盗み見ると、喧嘩する二人を見ながらわっていた結が杏里の視線に気がついたのか、パチっと目が合う。思わずそらしそうになった視線をギリギリで耐え、そのまま繕うように笑うと、そらす訳でもなく結はふわっとした笑みを見せた。