今夜、君とBloodyKiss
何が可笑しかったのか、小さく笑うのをやめない結に、どんどん、何かが恥ずかしくなってきた。
「なんで、そんなに笑うの〜」
照れ隠しにドスっと背中に軽く拳を入れる。その衝撃に、痛いといいながら笑うのを辞めない。
「楽しいんだよ。」
「そうなの?」
顔だけ後ろを振り返った結と視線を合わせるように上を向く。
「あー、嬉しいってのもあるかも。」
「ごめんね、誕生日の前日で…」
申し訳なさそうに、顔を下げるとつい目に入ったマグカップを手に取る。
青をベースに夜空のモチーフの絵柄が可愛いと思っていると、そのまま、横から手が伸びてマグカップが移動する。
「気にしないで。杏ちゃんの気持ちだけでも嬉しいんだから。」
くるっと、一回り絵柄を見た結が杏里に笑顔を向けると、そっとマグカップを杏里の手に戻すと、人差し指を立ててゆっとくりその淵に置いた。
「決めた。」
笑顔の結とマグカップを数回見比べて、再確認を取る。
「え、本当に?」
「うん。」
じっとマグカップ見つめて考える。
可愛いと思ったが、それは自分の趣味であって少なくとも結の趣味ではないはずだ。なのに、そんな素早く決めてしまっていいのだろうか。
本当にこれでいいのか確認を撮ろうと結を見たが、全く決心が揺らがない表情だった。
「………おめでとう。」
「ありがとう。」
本人が良いと言うのだからいいのだろう。手にしたマグカップをそのままレジへ持っていく。お会計を済ませラッピングをしてもらったので、これで準備は完璧だ。