今夜、君とBloodyKiss
不満気に思いながら、目の前にあるチーズを掴んで口に入れる。
そのまま、再びぼーっとしながらテレビを眺めた。
「では、今週はここまで!さよーならー!」
司会者や出演者たちが大きく手を振り、カメラが引き切ると、ぱっとCMに変わった。
「あ、終わったねー」
ちらりと時計をみれば0時前。
もうすぐ日付が変わる時間だ。他に面白いテレビがないか、リモコンを手にすると横から手が覆いかぶさった。
自分の手以外の手が重なっている。部屋には二人きり。犯人が自分じゃない時点で確信を持って相手を見上げた。
「結?」
結の視線はまっすぐで、眼鏡越しの結の目がキラキラ輝いている。
「……………た」
ボソボソっと小さい声で呟いた言葉は聞こえることなく、宙に消える。
「結?なんて?」
尋ねてみても、視線は離れないし、答えもしない。代わりに結の手リモコンをはねのけ、杏の手を握る。